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最終日も観光して、ついに別れの時間が来た。
寂しさはあったけど、忙しくなるだろうしそれどころじゃないなと思っていた。
玲奈「また・・・しばらく会えないんだね・・・」
俺「そうやな。でも、次来たら今度こそいつでも会えるよ」
玲奈「うん・・・。バンビ君・・・本当にありがとう」
俺「いや、俺のセリフやな。ありがとう」
玲奈「ほんとに、仕事辞めちゃうの?」
俺「うん。もう決めたけん。大丈夫、仕事とか腐るほどあるやろ」
玲奈「そっか・・・。ごめんね」
俺「はい、出ました。もうあなた、ごめんね禁止!!次言ったら服を何も着ていない状態で山手線乗って」
玲奈「やだよwwていうか、バンビ君的にいいの?ww」
俺「すまん。失言やったww」
玲奈「嫌なんだww」
俺「ニヤニヤすんなしww」
玲奈「えへへww」
俺「じゃあ、俺が山手線に服を何も着ていない状態で乗ってくるわ」
玲奈「あ、頑張ってね」
俺「止めろや!!」
玲奈「別にバンビ君の服を何も着ていない状態見ても誰も喜ばないでしょww」
俺「いや、俺はモテるからね。同性愛者に」
玲奈「同性愛者にモテるんだww」
俺「知らんやったと?有名よ」
玲奈「知らないし、どうでもいいしww」
俺「俺が同性愛者やったけん、玲奈ちゃんに惚れたとよ?」
玲奈「なにそれww」
俺「同性愛者以外が玲奈ちゃんに惚れるわけないやん。胸ないし」
玲奈「胸胸うるさいしww」
俺「女の子が胸とか、連呼するもんじゃないよ」
玲奈「もう、なんかやだww」
俺「俺に言葉で勝とうとか、千年早いわ」
玲奈「ごめんなちゃいww」
俺「なんか久しぶりやね、それww」
玲奈「わりと気に入ってますww」
俺「俺も好きよww」
玲奈「え?私のことが好きって?ww」
俺「耳、大丈夫?」
玲奈「大丈夫!!ww」
俺「めんどくせーな、おいww」
玲奈「めんどくさいとか言わないのww」
俺「ま、好きやけどね」
玲奈「え?」
俺「好きだよ、玲奈が」
玲奈「突然だねwwうん・・・。私も」
俺「私も?何さ?ww」
玲奈「うぅ・・・。大好き!!」
そう言って、抱きついてきた。
俺も抱き締めた。
これから、二人でたくさん思い出を作ろう。
いっぱい笑って、時々怒って、幸せにしよう。
幸せになろう。
そんなことを考えていた。
俺「仕事辞めるって言っても引き継ぎとかあるけん、すぐにじゃないと思う」
玲奈「うん、分かってる」
俺「なるべく早くしてもらうように交渉するけん」
玲奈「おっけい!!」
俺「とりあえず、仕事辞めたら家探すの手伝ってww有給があるはずやけん、それ使って家探しと職探しをしようww」
玲奈「わかった!!ごめ・・・なんでもないww」
俺「危なかったねwwじゃあ、あっち着いたらまたメールか電話かするけん」
玲奈「うん、待ってる!!あ、空港まで見送るよ」
俺「よかって。金無いっちゃけん、やめときぃwwどうせすぐ会えるけん」
玲奈「うん・・・。わかった。じゃあ、最後に渡そうと思ってたんだけど、これあげる」
俺「え?何これ?」
玲奈「少し早いけど、誕生日おめでとう!!」
俺「え?マジか!!知っとったと?」
俺の誕生日は3日後だった。
玲奈にお金を使わせたくなくて隠していた。
玲奈「えへへ。ドッキリ!!ww」
俺「マジか!!リアル嬉しい!!開けていい?」
玲奈「うん、開けて!!」
プレゼントは、ガガミラノっていうすげぇ高い時計だった。
俺「え!?マジ!?これめっちゃ高いやつやん!!」
玲奈「ふふふ。奮発しちゃったww」
俺「いや、これ奮発したとかで買えるもんじゃないやろ!!」
玲奈「バンビ君、言ったよね?自分で稼いだお金を使いたいことに使うだけだって。私も、バンビ君につけてほしくて買っただけだから。五百円貯金使ってww」
真相は分からないけど、五百円貯金で払ったっていうのはたぶん嘘だ。
そんなもので買える金額じゃない。
俺「・・・。そっか。いや、ほんとに嬉しいわ。マジありがとう!!」
玲奈「どういたしましてww」
俺「よっしゃ、じゃあ、このネックレスをあげよう」
俺はそのときつけていたネックレスを渡した。
玲奈「え?ほんとに?」
俺「うん。女の人がつけても変じゃないやろ。使ってよ」
玲奈「・・・誕生日プレゼントなのに・・・」
俺「そのネックレス拾ったやつやけん、気にせんでいいばい」
玲奈「その嘘下手すぎでしょww」
俺「そう?wwちゃんとつけろよww」
玲奈「うん・・・。大事にするね」
俺「俺も、一生大事にするわ」
玲奈は満面の笑みで頷いた。
その笑顔が可愛すぎて、俺は少しの間、九州に帰るのさえ嫌になった。
俺「じゃ、いいかげん飛行機乗り遅れるけん、行くわww」
玲奈「うん、気をつけてね」
俺「おうよ。じゃーね」
玲奈「ばいばい」
そこで、玲奈と別れた。
空港に向かう電車、飛行機の中、終始ニヤニヤしてたww
まだまだ問題は山積みだったけど、前回とは違ってモヤモヤはなかった。
(なるようになる!)
だいぶ考えが楽観的になってたww
玲奈と一緒に住みたいなとか、どこどこに遊びに行きたいなとか、そんなことばかり考えてた。
でも、これが最後の別れになった。
ごめん、ここからは正直書きたい内容ではないんだ。
飛行機で九州に帰り、玲奈にメールした。
『九州帰ってきたぜぃ!!今日までありがとう。相変わらず脱力感がハンパないww』
そんな感じのメールをしたが、返事がなかった。
家に着いても連絡がないので、おかしいと思い電話したがコール音が響くばかり。
少し心配になったけど、寝たかな?くらいしか考えなかった。
(明日から忙しくなる。不安もあるけど、玲奈と二人で乗り越えよう!)
その日、疲れていたのもあり、俺はすぐに寝てしまった。
すると夜中(たしか午前2時くらい)に携帯に電話があった。
玲奈からだった。
眠い目を擦りながら電話に出た。
俺「もしもし?」
?「あ、もしもし?バンビさんの携帯でしょうか?」
俺「はい、そうですけど・・・?どなたですか?」
?「私、玲奈の母親です」
俺「え?ええ!?あ、いや、あ、初めまして・・・。どうかされましたか?」
この時はね、「うちの娘のために東京に来る?ふざけんな!!」的な電話かと思いました。
玲奈母「夜中に申し訳ありません。おやすみでしたよね?」
俺「いえ、それは大丈夫ですけど・・・」
玲奈母「実は、玲奈が交通事故に遭って意識不明なんです」
俺「はい!?ちょっと待ってください。どういうことですか!?」
玲奈母「私も先ほど東京に着いたばかりなのですが・・・。本日、バンビさんにお会いしていたんですよね?帰宅中、自転車に乗っているところで乗用車と事故を起こして・・・今、意識不明の状態なんです」
俺「いや、ちょっと待ってください。どうして僕と会ったことを知ってるんですか?ていうか、なんで・・・えっと・・・ちょっと、すみません・・・」
かなり動揺してた。
状況がよく呑み込めない。
玲奈母「玲奈の携帯が事故現場の近くに転がっていたらしく、警察の方にお願いしてお預かりしました。携帯を開くとバンビさんからメールと着信履歴が入っていました」
俺「・・・。病院はどこですか?」
玲奈母「え?◯◯市の◯◯病院(東京じゃないけど関東)ですけど・・・九州にいらっしゃるんですよね?」
俺「わかりました。大丈夫です。すぐ行きます」
玲奈母「え・・・でも・・・お仕事とかは・・・」
俺「大丈夫です。行きます」
玲奈母「・・・分かりました。気をつけてくださいね」
俺「大丈夫です。ありがとうございます」
電話を切り、すぐに会社に電話した。
前にも書いたと思うけど、夜勤もあるくらいなんで夜も誰かいます。
俺「お疲れ様です。バンビです」
会社には嘘をついた。
嘘の内容は省くけど、とにかく仕事の心配はしなくていいから落ち着いたら来いとのことだった。
正直、嘘をついたことに対する罪悪感はなかった。
それどころじゃなかったっていうのが正しいかもしれない。
すぐに荷物をまとめた。
ついさっきまで東京に居て荷物をまともに片付けてなかったので、下着の替えを準備するくらいでそう問題はなかった。
ネットで飛行機を探したが、どこもいっぱいだった。
一番早いのでその日の最終便のみ。
俺は決心して車に乗り込んだ。
病院の住所を調べてナビに入れると1000キロ以上あったのを覚えてる。
迷いはなかった。
鬼のローンで購入した愛車に乗り込み、高速を走った。
車を運転しだして少し経つと、冷静になってくる。
こっちに着いて電話したときに連絡がつかなかったのはそういうことだった。
っていうか、俺が東京に行ったから自転車に乗って事故に遭ったんじゃないか?
あのとき、カッコつけずに見送りに来てもらっていれば・・・。
あのとき、あのとき・・・。
今更悔やんでもどうしようもないことが頭から離れなかった。
“もし”なんて存在しないのに、そればっかり考えていた。
あまり寝てなかったが、眠気はなかった。
それよりも、国産車の最高速度に腹が立った。
普段はあまり飛ばさないんだけどね。
九州から関東まで、10時間以上かかった。
それでも、かなり早い方だったと思う。
トイレに2、3回ほどパーキングに寄っただけだった。
病院につき、すぐに玲奈の携帯に電話した。
玲奈のお母さんが電話に出る。
俺「もしもし、今、病院に着きました。どこですか?」
玲奈母「ICUです。ロビーに行くので待っていてください」
ロビーで待つ間、不安と緊張で泣きそうになった。
着いたのは夕方近かったので、結構人がいたんだが、玲奈母はすぐにどれか分かった。
玲奈に似ていた。
でも、目が腫れていることはすぐに分かった。
実の娘がICUに入っているんだ。
無理もない。
玲奈母「初めまして。遠いところをありがとうございます」
俺「いえ、大丈夫です。ところで、玲奈さんの容体は?」
玲奈母「・・・。とりあえず、病室に行きましょう」
俺「はい・・・」
ICUまでは無言だった。
ICUに入り、俺は言葉を失った。
そこには、顔に白い布を掛けられた玲奈らしき人物が横たわっていた。
俺「玲・・・奈・・・?」
玲奈母「つい先ほどでした。ご連絡差し上げようと思ったのですが、もうだいぶ時間も経っていたのでこちらまでいらしてると思いまして・・・」
俺「玲・・・奈・・・」
玲奈母は泣いてた。
俺は、このとき泣かなかった。
俺「玲奈・・・おい、玲奈・・・。嘘やろ?ドッキリかなんか?俺の気持ちを確かめようってか?もう、騙されたばい。降参。俺の負け」
玲奈は返事をしない。
動かない。
白い布が動かず、息をしていないのが分かる。
俺「俺、やっと仕事辞める決心ついたとよ・・・。東京に来たら高円寺に住みたいとか、車は一旦売るけど、またお金貯めて買おうとか、色々考えよったとよ・・・」
冷静なつもりだった。
玲奈のお母さんに迷惑かけないでおこうとか考えてた。
俺「死んじゃいかんやろ。俺、これからどうしたらいいと?東京来たら、一緒に行きたいとこいっぱいあるよ。ディズニーランド行こうって約束したやん。一緒に福岡行こうって約束したやん。ハンドしようって言ったやん。綺麗な海、見たいっちゃろ?約束守って、これからまた約束が増えるっちゃないと?ねぇ、玲奈・・・返事してよ・・・玲奈・・・」
いくら話しかけても、玲奈は返事をしない。
認めたくなくて、信じられなくて、何度も名前を読んだ。
最初は涙なんて出なかったのに、言葉を口にすればするほど込み上げてくる。
お母さんが黙って白い布を取ってくれた。
玲奈は頭に包帯を巻いたまま目を瞑って、眠っていた。
その瞬間、込み上げてきた感情が、全部出た。
すぐそこにお母さんがいることも忘れて、抱き寄せた。
まだ玲奈の体温は温かかった。
でも、顔をつけたとき冷たくて、演技なんかじゃないってそのとき実感した。
服から出ている体の部分部分に包帯や傷が残っていた。
きっと、最後まで生きようとしたんだろう。
それでも、死んでいるとは思えなかった。
そのくらい、綺麗だった。
言葉が出なかった。
ひたすら、玲奈を抱き締めて泣いた。
これから、色々な幸せが待っているはずだった。
思い出が増えていくと思っていた。
なんであのとき、すぐに仕事を辞めて東京に行かなかったんだろう。
なんでわざわざ確かめようってまた東京に行ったんだろう。
好きだって分かっていたのに。
そんなことをしなければ、もっと早く行動していれば、こんなことにはならなかった。
今この瞬間も、玲奈と笑っているはずだった。
玲奈の首元に最後に渡したネックレスがついていた。
そのことに気づいて、また泣いた。
玲奈母「バンビさん・・・。私、玲奈からバンビさんの話を聞いていました。すごく大好きな人ができたと・・・」
俺は流れてくる涙を必死で拭う。
玲奈母「これ、この子の携帯で作成中だったメールです。警察の方がこれを打ちながら自転車に乗っていて事故に遭ったんだろうと・・・」
そう言って携帯を見せてきた。
こういうのって、漫画やドラマじゃなくてもあるもんなんだね。
まあ、付き合った次の日に作ったメールだし、今までありがとうとか、そんな重いやつでもないんだけどね。
コピペしようと思ったけど、絵文字とかあるから、見て打ちました。
――――――――――――
バンビ君、今日は東京まで来てくれてありがとう。
そして、私のために東京に引っ越すって言ってくれて、ありがとう。
私ね、バンビ君に言わなきゃいけないことがあるんだ。
実はね、私、初めて会ったときからバンビ君のことが好きでした。
彼氏を作ったのも、バンビ君を忘れるためだったんだ。
こんなこと突然言ってごめんね。本当は、何度も諦めようと思った。
でも、諦めきれなくて、前の彼氏と別れたんだ。
フラレたって嘘ついてごめんね(笑)
すぐに連絡しようと思ったけど、彼女とかいたらショック受けそうで送れなかった。
そんなとき、バンビ君から電話があったんだよ。
嬉しかったな。あのとき。東京に来たら、いっぱい遊びに行こうね。
行きたいところ言ってね!どこでも連れて
――――――――――――
ここでメールは終わっていた。
ここで事故に遭ったってことだろう。
涙が止まらなかった。
俺「玲奈・・・。ごめんね。ごめんね・・・」
本当は「ありがとう」って言いたかったのに、この言葉しか出なかった。
今になって考えれば、きっと誰も悪くないんだろう。
強いて言えば、携帯を使いながら自転車に乗った玲奈が一番悪いんだろう。
でも、もう玲奈と馬鹿な話もできない。
あの可愛い声を聞くことができない。
玲奈のご飯を食べることはできない。
大好きな笑顔を見ることができない。
全部、もう、会うことはできない。
そう思うと、涙が止まらず、ひたすら泣き続けた。
永遠の悲しみってやつを知った瞬間だったと思う。
そこからは、淡々と進んだ。
玲奈の父親は他界してて、お姉さんが二人とお母さんだけだった。
俺は、全てにやる気が無くなった。
東京に行くのはやめた。
玲奈がいない東京に行っても意味はないし、玲奈との思い出が残る地に行きたくなかった。
仕事も簡単に休めるような仕事じゃなくて、葬式にも出れなかった。
玲奈とのメールを何度も読み返して、泣いた。
馬鹿な話ばかりだったけど、本気で楽しかった。
大好きだった。
結婚したら・・・とか、何度も考えていた。
玲奈のいない世界に居ても意味は無いとさえ思った。
馬鹿なのは分かっていたけど、本気でそう思った。
でも、玲奈はきっとそれを望まないだろう。
そんなことをして玲奈に会えたとしても、玲奈は笑ってくれないと思う。
忘れられない。
忘れちゃいけない。
約一ヶ月くらい鬱状態になって、やっと出した結論だった。
玲奈の分まで生きよう。
本当は、玲奈の分まで幸せになるべきなんだろう。
玲奈もきっとそれを望むはず。
でも、もう少し、もう少しの間だけ、玲奈のことを好きでいたい。
いつかきっと歩き出すから。
もう少し、思い出の中で立ち止まっていたい。
たった一日だけの恋人。
でも、俺にとっては永遠に忘れられない、大切な人。
玲奈に出会えたという幸せ、玲奈が俺を好きになってくれた幸せ、今、生きているという幸せ。
全てを噛み締めて、生きていこう。
ありきたりかもしれないし、正解ではないのかもしれないけど、苦しんで苦しんでやっと出した答えだった。
ただ、たとえ歩き出しても、玲奈じゃない他の誰かを好きになったとしても、本気で愛した、たった一人の、玲奈という思い出を俺は一生忘れない。
以上で終わりです。
最後らへんは感情が入りすぎた部分がありました。
もう少し書きたかったんだけど、限界です。
涙が止まりませんww
正直、ここまで長くなるとは自分でも思ってなかったですww
これは投稿する前に書き溜めたんですが、書きながら何度も泣きましたww
その後がないことはないんですが、玲奈の話を聞いてほしかったので、書いてません。
端折った部分もあるけど、今はこれ以上は書けないです。
申し訳ない。
特定を避けるために微妙に弄った部分もあるし、会話なんかは「こんな会話したなー」とかがあるけど、「釣りじゃないんです」って言うと釣りっぽくなるから言わないようにしてました。
玲奈が亡くなったのが、ちょうど二ヶ月ほど前で、四十九日が終わったと連絡があり、自分の気持ちを整理する意味でも書かせてもらいました。
本当は玲奈は生きていることにして、今ではラブラブやってますよーという釣りエンディングも考えましたが、結局それは自分の願望であって全く前に進めてない・・・という結論に至り、そのままの形で書かせてもらいました。
長い文章、読んでくれて本当にありがとうございます。