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最初は僕が主導権を握っているのだとばかり思っていた。
コウタがユキの尻に敷かれているのを見て、可哀想だなぁなんて思っていた。
僕とレイコは違う。
レイコの希望も聞くけれど、最終的に2人のことを決めるのは僕だ。
「週末、どこに遊びに行く?」
「シュンの行きたいとこ」
「この間は僕の行きたいところだったから、レイコの行きたいとこ言ってよ」
「・・・あの、ディズニーランド・・・」
僕が「えっ?」という顔をしたらレイコはすぐに、「えへ、ちょっと言ってみただけ。シュンの好きなとこにしよ」と言い出す。
「ちょっと待って。でもレイコ、そういうトコ好きだっけ?」
レイコは頭を振ると・・・。
「ホントはそれほどでもないんだけど、好きな人ができたら行ってみたいと思ってただけ・・・」
「ディズニーランド上等じゃないの。一緒に行こうじゃないの」
僕は即断すると、土曜日の約束をした。
東京駅で待ち合わせの場所に行ってみると、レイコはもう待っていた。
背が高いから遠くからでも目立つので便利だ。
「待った?」
「ううん、私も来たとこ」
でも僕はそれがウソだと知っている。
レイコは僕との待ち合わせに遅れたことがない。
遅れないどころか、僕が15分くらい前に着いた時、レイコはもう待っていた。
僕はレイコの荷物を持ってやると、武蔵野線のホームを目指して歩き始めた。
「何が入ってるの?」
僕はレイコの荷物を揺らして見せて聞いた。
「あんまり揺らさないで!」
レイコが慌てていうので僕が立ち止まると、「ごめん、後で見せるから揺らさないで・・・」と遠慮がちに言った。
着いてみると凄い人出で、途端に僕は憂鬱になった。
散々待たされた挙句、ようやく1つのアトラクションに乗ると、僕はちょっとげんなりした。
「ちょっと早いけどお昼にする?」
レイコの誘いに僕は二つ返事で賛同すると、手頃なレストランがないか周りを見渡した。
「食べるものは持って来てるから」
レイコはニッと笑うと荷物を指差して見せた。
袋を開いて次々とタッパを取り出すと、手の込んだピクニックランチがどっさり出てきた。
「凄い!レイコ、料理上手なんだ」
そう言うとレイコはとても嬉しそうな顔をした後、ちょっと照れて舌をチロッと出して見せた。
レイコのお弁当は本当に美味しくて、バクバク食っているうちに、こういう女を嫁さんにするのがいいのかなぁなんて思ったりした。
「それにしても凄い人混みだね」
「うん。シュンと、この人混みの風景の一部になりたかったんだ」
「人混みいいじゃない。風景になろうじゃないの」
僕とレイコは夜の花火が終わるまで人混みの中を散策し続けた。
帰りの電車の中、僕とレイコは隣通しに座ってしっかり腕組みをしたままうつらうつらしていた。
東京駅が近くなったところでレイコに聞いた。
「ウチ、来る?」
レイコはしばらく考えていたが、僕の方を見て小さく頷いた。
電車のホームに降りてレイコは電話をかけた。
「もしもし、お母さん?今日、ユキのとこ泊まってく」
電話をかけ終わるとレイコは僕を見て、「ウソついちゃった」と言って、舌をペロッと出して見せた。
ウチに着く前にレイコは歯ブラシを買うと言ってコンビニに立ち寄った。
「シュン、あれ、ある?」
「なに?」
「だから、アレ」
レイコの視線の先には、夜のお供となるゴム製品が並んでいた。
レイコに買わせるわけにはいかず、レイコが歯ブラシを買った後、僕は一番小さな箱を掴んでおじさんの店員さんを選んで購入した。
「シュン、もう、ダメだよ。私、おかしくなっちゃう・・・」
レイコは何度も絶頂を迎え、最後の1つを使い切ってティッシュで始末をすると、僕はレイコを抱き寄せた。
「シュン、ありがと。今日、凄く楽しかった」
耳元で囁くレイコの声を聞いて、僕は一層強く抱き締めると、レイコは大きな身体をして子供のようなあどけない表情のまま、僕の腕の中で眠りに落ちた。
<続く>