その恋はパンチラから始まった[第1話]

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俺「おい!見てみろよ!前に座ってる女。パンツ丸見えだよ」

俺は隣に座っている仲間を肘でつついた。
俺が2年生の時、体育館でバスケの試合を観ていた時のことだ。

友達1「えっ!?どこよ?」

仲間が反応よく聞き返してきた。

俺「正面に座ってる女だよ」

俺は見ているのがばれてはいけないと思い、視線はそのままに顔を正面から逸らすように少し横を向いて答えた。

友達1「どこ?どこだよ!?」

気色ばんで興奮したように聞き返してくる仲間。

俺「ほらっ、正面少し右寄りに座ってるじゃん」

指差して方向を指示するわけにもいかず、俺は口で説明した。

友達1「おぉ~!マジかよっ!」

満面の笑顔を浮かべながら下を向き、この感動を噛みしめるように小声で答える仲間。
俺から始まったこの伝言ゲームは結局、横10人まで繋がった。
妙な連帯感が生まれた一瞬だった。

友達1「ってゆーかさぁ~、あの女、自分がパンツ全開って気付かないの?」

友達2「あれ、まだ1年だろ?まだ中学生気分が抜けてないんじゃん?女としての自覚がないんだろ?恥じらいってもんがないんだよ」

純白のパンツを拝ませてもらっておいて仲間たちは贅沢を言っている。
なんて罰当たりなやつらなんだ!
俺達の焼けるような視線を感じたわけではないと思うが、彼女は体勢を変えた。

友達1「あ~あ、もう見えなくなっちゃったよ」

友達2「おい、他にもいないか探してみようぜ!」

友達3「俺は右から見るから、お前は左から見ろよ」

結局は無駄骨に終わってしまったが、この時いくつかの収穫があった。

1つ、俺達はいつもまとまりがないが、エロでは一つになれるということが分かったこと。
2つ、伝言ゲームは意外に素早く、正確に伝わるということが分かったこと。
3つ、新しい彼女ができる段取りができていたこと(俺限定だったが)。

パンツ全開女(以下『Y』)のビジュアルは、俺好みだった。
パッチリとした大きい二重の目が魅力的で、美人というより可愛いタイプ。
身長は155センチくらい、胸はCカップくらい。
ビジュアル良し、しかもパンツ全開のおまけ付き。
さらに振られたばかりで哀愁を帯びている俺にとって、Yが気になる存在になるには時間は全く必要としなかった。
球技大会が終わり、体育館を出る時、俺は仲間に聞いた。

俺「さっきのパンツ女、結構可愛くなかった?」

友達1「顔?そんなの見てねぇ~よ。それどころじゃなかっただろ」

こんな身近にバカがいたとは・・・。

その日の夜、昼間の光景が頭から離れなくて眠れなかった。
どうしてもあの子をものにしたい!
絶対に付き合いたい!
何がなんでも手に入れる!
そう思い、俺は決意と股間を熱く、硬くした。

しかし、ここでふとした疑問が浮かび上がってきた。
付き合うってどうやって?
あの子、名前は?
クラスは?
オォ~~~ノォ~~~!ガッデム!
名前もクラスも分からねぇ~よ!
どうやって探す?
聞き込みでもするか?
しかしどうやって?

「あの~決して怪しい者ではないんすが、ちょっと聞きたいことがあるんですよ。球技大会の時に体育館でパンツ全開にしてた女を知りませんか?えぇ、分かってます。おっしゃりたいことは十分に分かってますとも。質問は変態っぽいですけど、私は至ってまじめにお聞きしてるんですよ」

って聞き込みでもするのか?
それとも1年のクラスをしらみ潰しに探すのか?
しかし10組まであるんだぞ!
ちょっと無理だろ。
2年が1年のクラスをふらふら歩いて目立つのも嫌だし。
目立つだけならまだしも、下手したら「変な2年生がいる」って噂が立つかもしれない。

あぁ~どうしよ~?
もうすぐ1学期が終わっちゃうよ~!
2学期まで我慢できないよ~!

今でもそうなんだが、俺は欲しいと思ったものはすぐ手に入れないと気がすまないタイプだ。
『我慢』って言葉は俺の辞書にはない。
今回の話が上手くいくなんて自信はなかったが、ダメならダメでもいい。
とにかく俺は結果がすぐに欲しい。
いい作戦が浮かばず、しばらく考えてたが、俺はいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
しかし俺のこのジレンマは翌日、仲間が昨日の体育館での出来事を話していた時に呆気ないほど簡単に解決した。

友達1「昨日、体育館でさぁ~、パンツ見せてる女がいてさぁ~」

友達2「見せてるどころじゃなくて全開だったよな~?」

「うん、うん」と一同に頷くチェリー達。

俺「顔も可愛かったよな?」

俺は仲間のその子に対する評価を聞きたいと思い、問いかけた。

友達3「顔?そんなの見てねぇ~よ」

昨日パンツを見たメンバーのうち7、8人が集まっていたが、半数以上は顔は見ていないと言う。
はぁ~ホントにバカばっか・・・。
そのうちの1人が答えた。

友達4「意外に可愛かったよな」

(こいつはバカじゃないな)

俺「だろ?お前もそう思う?あの子、なんて名前なのかな~?」

友達4「なんでだよ?」

俺「いや、ちょっと気になってね」

友達5「おっ前マジかよ~!Kと別れた(振られた)ばっかじゃん?」

俺「それとこれとは別だよ」

呆れたような表情の仲間を尻目に俺はさらっと答えた。

友達6「お前も好きだよなぁ~。で、もし分かったらどうするの?」

俺「アタックしてみようかなと思って」

友達7「マジでっ!?」

友達8「でもどうやって調べんの?顔しか分からないんだろ?」

俺「そうなんだよなぁ~、それが問題だよなぁ~・・・ふぅ~」

ため息とともに俺のアタック発言に盛り上がっていた場のテンションが一気に下がった。
そんな時、起死回生の発言をしたヤツがいた。
Tだ。
いつもはそんなに目立たない存在のTだが、この時はヒーローだった。

T「俺、知ってるよ」

みんなの視線が一気にTに集中した。

俺「はっ!?なんで?ホント知ってんの!?」

俺の熱い問いかけに、落ち着けという感じで手で制するようにしてTは冷静に返事をした。

T「だって同じ中学出身だもん」

中学の時、生徒会長だったTは全校生徒の顔を覚えていると豪語していた。
Tの出身中学は山の中にあり、1学年1クラスくらいの規模だったと思う。
その規模から推測するに、おそらく全校生徒は100人もいなかったのではないだろうか。
頭のいいTにとって、そんな少人数の顔を覚えることは朝飯前の芸当なのだろう。

俺「で、なんて名前?」

俺の問いかけに手を差し出すT。

俺「この手はなに?」

T「情報提供料だよ」

頭は良かったが雑魚扱いされていたTのこの態度。
その態度に周りは色めき立った。

友達1「お前ふざけんなよっ!名前を教えるくらいで何言ってんだよ!」

友達2「さっさと教えろよ!」

T「冗談だよ、冗談」

おちゃらけた口調で返事をするTが続けた。

T「名前はY.Y。家は俺の近くだから住所は◯◯。電話番号は家に帰れば分かるけど、住所が分かってるから電話帳で調べられるだろ?分かんなかったら言って、教えるから」

(お調子者でコウモリなお前のこと、あまり好きじゃないけど、今日は役に立ってくれたよ、ありがとう~T)

俺は感謝の意味を込めてキャビンマイルドを1本、黙ってTに差し出した。

その日、学校が終わると俺はすっ飛んで家に帰った。
家に着くなり着替えもせずに電話帳を捲った。

(えっと、Y、Y、Y・・・)

Yの項目を探し当てた俺の手が止まった。

(はっ!?なんだよこれっ!?一体何軒あるんだよっ!?)

そう思わずにはいられなかった。
Yさん宅は、少なくとも30軒はあったと思う。
田舎特有の現象である。
きっと周りは全部親戚に違いない。
こりゃダメだ。
一軒一軒電話するわけにもいかない。
仕方ない、Tに借りを作るのは嫌だけど教えてもらうか。
また情報提供料とか、たわけたこと言われたらどうしよう?
そう思いながらTに電話をした。
しかし、その心配は杞憂に終わった。

「俺が(電話番号を)教えた言ったってことは内緒にしておいてよ」

という条件で、意外にもあっさりとTは電話番号を教えてくれた。

よしっ!これで電話番号は手に入れた。
あとは行動(電話をする)あるのみだ。
普通なら勢いに任せてすぐに電話をすると思うが、ここでいざとなるとビビりまくる俺の負け犬&腰抜け根性が出た。
今日は日が悪い、日を改めよう。

次の日、あれこれ考えても仕方ないと俺は覚悟を決めダイヤルした。
Yの家は市外のため10桁の番号を回さなくてはいけない。
ダイヤルを回すごとに心臓の鼓動も速くなってくる。
呼び出し音が聞こえる。
超緊張!!!

ガチャ。

俺「もしもし?」

?「はい、Yですけど」

少し低い感じのする声が受話器から聞こえてきた。

俺「あのぉ~、Kと申しますが、Yさんいらっしゃいますか?」

?「はい」

一瞬間が空いた。

俺「あっ!もしかして本人?」

?「そうですけど・・・」

おいおい、本人なら本人で、「私ですが」くらい言ってくれよなぁ~。
リズムを狂わされたことと、しょっぱなからご本尊が出ると思っていなかった俺は、この意外(でもないんだが・・・)な展開に、どう対処していいか戸惑った。
何か話さなくてはいたずら電話と思われる。
しかも俺、名前を名乗ってるし。

俺「あっ、あの俺、同じ学校に通ってる2年のKって言うんだけど、知らない・・・よね?」

Y「えっえぇ・・・う~ん、ちょっと分かりません・・・」

警戒するような少し緊張気味な声で答えるY。

俺「そっ、そうだよね~。知ってるわけないよね」

少しは名前が売れているかと、ほんのちょっぴり期待していた俺は、落胆の色を相手に悟られないよう明るい口調で答えた。

Y「・・・」

俺「あっ、今、電話してても平気?」

良い人を演じようと相手を気遣うふりをする俺。

Y「えぇ、大丈夫ですよ」

俺「突然、電話なんかしちゃってごめんね」

俺はなんとか話題を作って会話の糸口を見けるようと時間稼ぎの意味も含め、今更ながら突然の電話に対する非礼を詫びた。

Y「いえ、別にいいですけど。それより聞いてもいいですか?」

俺「えっ?何?」

相手からの質問である。
多少でも俺からの電話に興味があるのか?
俺は期待した。

Y「どうしてうちの電話番号が分かったんですか?」

俺「えっ?どうしてって・・・調べたから?」

なぜか疑問形で答える俺。

Y「どうやって調べたんですか?」

俺「どうやってって・・・電話帳で?」

さらに疑問形を使用する俺。

Y「電話帳で、ですか?でもうちの近くにYって家、いっぱいなかったですか?」

俺「・・・」

辺に誤魔化して警戒心を与えてしまっては、上手くいくものもいかなくなる。
俺は正直に言うことにした。

俺「ホントのこと言うと、Tに聞いたんだ。同じ中学出身でしょ?」

100人の男友達より1人の女性が大切。
そんなフランス人の男のようでありたいと常日頃から思っていた俺はあっさりとTを裏切った。

Y「あぁ~T先輩?」

Tを小馬鹿にするようなYの口調で一気に緊張が解けた。

俺「そう、T。知ってるでしょ?生徒会長だったんでしょ?」

Y「知ってますよ。あの先輩、おっかしいでしょ?」

Tをおかずにして会話は盛り上がった。
普段は使えないTだが、意外なところでその存在意義を発揮した。
がしかし、Tの話題で盛り上がっている場合じゃない。
本題に入らなくては。

俺「Tの話はどうでもいいんだけどさぁ~」

Y「どうでもいいんですかぁ~?その言い方ってひどくないですか?」

口調とは裏腹に軽く笑いながら返事をするY。

俺「どうでもいいよあんなヤツ。で、今日電話した理由なんだけどさぁ~」

Y「あぁ、はい」

笑い声がぴたりと止んだ。
受話器越しだが相手の緊張する感じがはっきりと感じ取れた。

俺「球技大会の時、体育館で(パンツ全開にしている君を)見かけて、いいなぁ~と思って、それで電話したんだ。Yさん(この時は苗字で呼んだ)って彼氏とかいるの?もしいないなら俺と付き合わない?まぁ顔も知らないで付き合うなんて出来ないと思うから、一度見においでよ。休み時間はだいたい廊下に出てるから。あっ!それと顔は期待しないようにね?ホント大した顔じゃないから」

Y「先輩?今『体育館で見かけた』って言いましたよね?もしかして私、座ってました?」

俺「なんで?」

Y「あの時私、足が痛くてすっごい座り方してたんですよ。それで友達から、『下着見えてるよ』って注意されて。座っている時だったら、もしかして先輩に見られたかな~と思って」

おぉ~気付いてたんだ~!
よかったぁ~正直に言わなくて!
(後日白状したが)

俺「えっ!?そうなの?なんだぁ~勿体ないことしたなぁ~。チャンスを逃したよ。でも俺が見かけた時は残念ながら歩いている時だったから」

Y「そうなんですか?別に下着くらい見られたってどうってことないんですけどね」

Yって妙にあっけらかんとしてるな。
俺が今まで付き合ってきたタイプとは違う。
歴代の彼女(って何人もいないけど・・・)はみんな、女らしくおしとやかで恥じらいがあった。
今までと全く違うタイプでもあり、初めての年下相手ってこともあり、俺はYに一層興味が湧いた。

俺「いつ頃見に来る?」

Y「え~、それは分からないですよ」

俺「もうすぐ夏休みになっちゃうから、早くしないとチャンスがなくなるよ?」

Y「そうですね。近いうち見に行きますよ」

俺「じゃあ週明けの月曜にもう1回電話するよ。その時に返事聞かせてよ?」

Y「月曜ですかっ!?」

俺「何?家にいないの?」

Y「たぶんいると思いますけど・・・」

俺「いると思うけど、何?」

言葉を濁すYの言い方が気になって俺は聞いた。

Y「そんなに早く(顔を見に)行けないかもしれないから・・・」

俺「あっ、別にそれならそれでいいよ。返事はまた今度でもいいから。とりあえず月曜に電話するよ。いい?」

Y「それならいいですよ」

俺「最後に。Yさん、彼氏とかっているの?」

会話の感触からいないことはなんとなく分かっていたが、確認のため聞いておこうと思い質問した。

Y「いませんよ」

俺「そっ。良かった。彼氏がいたら怒られちゃうとこだったよ。じゃ、また月曜に電話するね。おやすみ」

Y「おやすみなさい」

今だから言うわけではないが、この時、新しい恋の予感がした。
(上手くいくときって独特の雰囲気ってあるよね?)

これから発展する恋に確かな手応えを感じ、今後のYとの関係に期待と股間を膨らませて、眠れない夜を過ごす17歳の初夏であった。

<続く>

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