暗い帰り道[前編]

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憧れの女子高に入学することができて、私の学校生活はとても充実していた。
テニス部の練習は厳しいけれど、仲の良い同級生はたくさん居るし、優しくしてくれる先輩も少しは居る。
学内に男子が居ないというのは、物足りないと言えば物足りない。
でも、そのぶん女子が多いわけで、つまり友達に成り得る存在もそれだけ多いわけで、悪いことではないと思う。
特に私の場合、部活動に打ち込んでいるので、恋愛はもう少し先でも良いし。

不満と言えば、あとは、部活後に学校のシャワールームを使えないというのがある。
数が限られているので、三年生しか使うことを許されていないのだ。
三年生が帰るのを待ってから使っている二年生も居るには居るけど、一年生までそんなことをしたら、生意気だとか何とか言われてしまう。
だから、夏が近づいて暑くなってきた時期にも関わらず、私は汗だくの身体をタオルで拭いただけで帰りの電車に乗らなければならないのだった。

7時の電車は、帰宅ラッシュに直撃されてほぼ満員だ。
見知らぬおっさんたちと密着を強制されるのは嫌だったが、汗臭い女子高生に密着されるおっさんたちだって大概迷惑だったろう。
それを思うとあまり嫌な顔もできない。

学校から駅までは自転車だけど、駅から家までは徒歩になるので、そこからがきつい。
駅と家の間も自転車で移動したいところだ。
部活で疲れきった足を使い歩くのは、かなり辛い。
もうひとつ自転車が欲しい。
実際、そうしている生徒は少なくない。
そのことを母親に言った時の返答は全く冷たいものだった。

「バイトして自分で買えば?」

要約するとそんなとこだ。

まあ、もっと柔らかな表現を使っていたような気がするが、要求を否定された私からすれば、酷い扱われ方をされたような気分になった。
部活でバイトどころではないというのに。
ワガママに過ぎないのは分かっていても、自転車をふたつ買い与えてもらった友達を何人か知っているので愚痴りたくもなる。

世の中は不公平だ。
とはいえ、それを言ったら、私はずいぶんと恵まれていると思う。
別に日本に生まれてきただけで外国人に比べれば恵まれているとか、そういう薄っぺらい奇麗事を言いたいのではない。
単純に、周りの友達と比べて容姿が優れているのだ。
はっきり言って私は可愛い。
自己評価ではクラスで一番だ。
高校で一番かと言われたら、さすがにそうとは言えないかもしれないが、もしミスコンが開かれれば、とりあえず候補には挙がるだろう。
そんな感じ。

駅の改札を抜けると、後は数分で家に着く。
徒歩だけど。
帰り道には申し訳程度の電灯があるだけで、結構暗い。
私はこの暗い帰り道が好きだった。
閑静な住宅街なので、たまに自動車が通るくらいで、あまり五月蠅くはない。
電車の音もあるか。
とにかく、そういうのを除外すればコオロギの鳴き声が聞こえてきそうな静けさである。
人通りの少ない道を歩いていると、なんでか落ち着く。
だから好きだ。

しかし、そのお気に入りの環境がレイプの原因となった。
後から考えれば、なんて危険な道だろうと思うのだけれど、実際に被害を受けるまでは、全く思いもしなかった。
頭の片隅くらいにはそういう可能性も浮かんでいたかもしれないが、真剣に考えることはなかった。
レイプなんて自分とは無縁の世界で起きていることだとしか思っていなかったのである。

なので私は、後ろから走ってきたミニバンを気にも留めなかった。
通り過ぎると信じて疑わなかった。
私の横で停まっても、それを不審には思わなかった。
道でも聞きたいのかな?と思った。
そして、だとしたら面倒だなと思った。
そう思いながらも礼儀正しく答えるくらいには、外面の良さを備えているので、この時もそうするつもりだった。

男が二人、後部座席からいきなり飛び出してきても私は危機感を覚えなかった。
なんとも間抜けなことに、(あぁ、なんだ、ナンパか)と思ったのだ。
彼らに腕を掴まれ、引っ張られる段階になって、ようやく事態を悟った時にはすべてが手遅れだった。

ミニバンに押し込まれた私は失禁しそうになった。
恐怖を感じると本当に尿道が緩むのだということを、このとき初めて知った。
お漏らしをしないよう、股間に力を入れる。
その間に外へ出ていた男を収容した車が発進する。

車の窓は真っ黒になっていて外の様子は見えなかったが、音と振動から車が動いていることが分かり、私は絶望的な気分になった。
もうどうやっても逃げられない。
実際には必ずしもそうではなかったかもしれないが、私はこの時点で逃走を諦めた。
だからといってもちろん、レイプされようとしている事実を受け入れることは出来なかった。

私は男たちに訴えた。

「お、お願いします、帰してください・・・」

喋っているうちに泣きそうになった。
男たちは薄ら笑いを浮かべるだけで、私の言うことを聞き入れる気なんてこれっぽっちもない。
それが彼らの表情から分かってしまった。

ついさっきまで、ごく当たり前の日常の中に居たのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
まるで理解できなかった。
この理不尽な状況には怒りを感じた。
泣き叫んで暴れ出したい気持ちすらあった。
けれど、男たちに対する恐怖の方がずっと強く私の心を支配していたので、癇癪を起こすことはとても出来なかった。
私は小さく震えながら静かに泣いた。
出来るのはそれくらいだった。

車内にはヤンキー風の若い男たちが4人居た。
全員20歳前後といったところだと思う。
ひょっとしたらもっと若くて、私と同じような年齢なのかもしれない。
運転席に一人。
助手席に一人。
そして、後部座席で私の両隣に一人ずつ。
彼らの手際から、計画的なレイプであることは明らかだった。

「その制服、◯◯女学園だろ?進学校の。頭良いんだ?」

右隣の男が話しかけてきても、私は震えるばかりだった。
無視した形になってしまったが、男は気にした風もなくニヤニヤと笑っていた。
すると左隣の男が私の顔をじっと見た。

「すげぇ可愛いな、おい。やっぱり当たりだったな」

「おー、こりゃ当たりだな」

左右から顔を覗き込まれて私は縮こまった。

「だから言ったろ。俺は後ろ姿を見るだけで、どれくらい可愛いか分かんだよ」

「前は外してたろうが。ぜってー可愛いとか言っといて、あんな微妙な女、どう考えてもハズレだろ」

「んーなこと言ってノリノリで犯してたくせによ」

「せっかく捕まえたんだからヤんなきゃ損だろ。つか、俺が言いたいのは、そういうことじゃなくてなぁー」

「ケツまで犯してたじゃねぇか」

「だーから、そういうんじゃねえっての」

両隣の会話を聞きながら私は無言で涙を流した。
私は足を揃えて膝に手を置き、行儀良く座っていた。
左隣の男に胸を掴まれても、姿勢を変えることはなかった。

「顔は可愛いけど、おっぱいはそんなに大きくないなぁ。こりゃあ減点だな」

男は楽しそうに笑いながら、私の胸を揉んでくる。

「・・・」

私は無言でそれを甘受していた。
とにかく恐くて、小さく震えていることしか出来なかった。

「大きさなんてどうでもいいだろ?重要なのは形だよ。あと色な。乳首の」

反対側の男はそう言って、もう片方の胸に手を伸ばした。
左右から好き放題に胸を揉まれるのは、人として扱われていないかのようで屈辱だった。

「まあ、乳首は重要だよな。ちょっと見てみるか」

左の男がセーラー服の裾を掴んだ。

「あ・・・」

私は思わず身をよじった。
それで男の手から逃れられるとは到底思えなかったが、無意識に動いてしまったのだ。

「なに?」

男は私の顔を見つめた。
短い言葉だったが、『抵抗したら怒るぞ』というような意味が込められているように感じ、私は身体を硬直させた。

「ほら、手を挙げて。バンザイだよ、バンザイ」

男に従ったわけではなかったが、セーラー服を捲り上げられると私は嫌でもバンザイをしなければならなくなった。
腕に力を入れればそれを回避することは出来るかもしれないが、とても実行する気にはなれない。
セーラー服を頭から抜き取られることによって、私は再び手を下ろすことが出来た。
上半身を守っているのは、セーラー服の中に着ていたTシャツとスポーツブラジャーだけになってしまった。
部活で流した汗の臭いがしたりしないか、少し気になった。
一時的とはいえ、脇を開いたりもしたわけだし。
そんな場合ではないというのは分かっているが、気になるものは仕方がない。
幸いなことに、男たちは私の体臭を気にしていないようだった。
まあ、一応、部室で8×4(エイトフォー)を脇に吹きかけてはいたので、それが役に立ったのかもしれない。

「高校生なのにスポブラかぁ。可愛いじゃん。何か部活でもやってんの?」

左の男がTシャツを脱がせながら話しかけてくる。
私はやはり答えられなかったが、代わりに右の男が言った。

「テニス部だよ。テニスラケットを持ってたろ?」

「んー?そんなもん、ないぞ?」

「拉致る時に落っことして、そのまんまだからな」

「本当か?」

男が確認したのは、私に対してだった。
私は辛うじて頷いた。

「なんだ、そっか。大事なラケットなんだろ?ごめんなー」

全く誠意のない謝罪だった。

Tシャツを脱がされると、今度はスポブラをたくし上げられた。
とうとう胸が無防備になってしまった。

「乳首ちっせー」

男は嬉しそうに言った。
もう一人の男も私の胸を見つめながら笑顔になる。

「いいねぇ。でも色はちょっと黒くないか?」

「お前、前にも言ってたろ、それ。暗いからだって。何回も言わせんな」

「車内灯が弱いんだよなあ」

両隣の男たちのやり取りに運転席から横槍が入る。

「うるせー!文句あるんならお前らが車用意しろよ!」

私は喧嘩でも始まるのではないかと恐れたが、しかし彼らにしてみれば、どうやら日常的な会話に過ぎないようで、男たちの表情が変化することはなかった。

「分かった分かった。この車で我慢してやるよ」

右隣の男がそう言うと運転席からまた不満げな声が上がった。
助手席からは笑い声がする。
女子高生を拉致して強姦に及ぼうとしているというのに、彼らの様子に緊張は見られなかった。
そのことから、今まで何人もの女性をレイプしてきたであろうことが窺い知れる。
ここまでの会話からもある程度は察していたけれど・・・。
倫理観を持ち合わせていない人間というものは本当に存在するのだ。
私はこの時、初めてそれを実感した。

胸を隠そうと思えば、出来ないこともなかったが、私の手は依然として膝の上にあった。

「可愛い乳首ちゃんを大きくしてやるよ」

左の男が私の乳首を鷲掴みにして、指先で捏ね回してきた。

「う、うう」

初めて男の人にそこを刺激され、私は呻かずにいられなかった。
気持ち良いというわけではないが、くすぐったくてじっとしてはいられない。

「感じるだろ?なあ?」

「・・・」

私は頭を小さく横に振った。

「こういうことをされたことはあるのか?」

「・・・」

「おい、聞いてるだろ?答えろよ」

なおも私が黙っていると男の指に強い力が加わった。

「い、痛いっ」

「答えろっつってんじゃん」

反対側の男が「まあまあ」と窘めてから、私に顔を向けた。

「そんなこと言われても、答えにくいよなぁ?」

「・・・」

「おお?俺も無視すんの?」

さっきまでは私が無反応でも怒りそうな雰囲気は微塵もなかったが、もうそういう空気ではないらしかった。
私は震える唇をなんとか動かした。

「い、いえ、ごめんなさい・・・」

「じゃあ、答えろよ。処女なのか?」

「・・・はい」

覚悟を決めて返事をすると、不機嫌そうにしていた両隣の男は一転して表情を和らげ、右の男なんて口笛を吹いたりもした。
彼らの感情の変化が読めず、私は困惑するばかりだった。
そうこうしているうちに、男の指で刺激された乳首は硬くなってしまった。
勃起状態になった乳首を見て、男は満足げに指を離した。

「処女のマンコを見せてもらおうかな。いいだろ?」

男は私に聞いてきたが、しかし返事を待つことなくスカートを掴んだ。
膝に置いていた手を払われ、スカートを捲り上げられると、白い下着が見えるようになってしまった。
もちろん、それだけでは終わらない。
男はすぐさま下着にも手を掛けた。
さすがに私は黙って見ていられず、男の腕を掴んだ。
ほとんど力を入れておらず、添えただけに近い。

「あ、あの・・・」

「はあ?なに、この手」

不快そうな顔を向けられ、私は一気に萎縮してしまい、男の腕から手を離した。
パンツがするすると下げられていく。
太股を過ぎ、膝を通過し、足首から抜き取られる。
スカートはすでに捲り上げられているので、私の股間が男たちに曝け出されることになった。

私は自らも下半身へ視線を送った。
黒々とした陰毛が目に入り、視界が涙で霞む。
どうして、こんな目に遭わなければならないのか。
あまりの理不尽に、ますます涙が溢れてくる。
覆うものが無くなった股間は、全くの無防備だった。
外気に晒されているだけでも違和感がある。
トイレでパンツを下ろした時と同じ感覚のはずなのに、全く別のように感じる。

「おい、そっち持てよ」

「ああ」

両側の男ふたりは示し合わせて私の太股を掴んだ。
私は左右から足を引っ張り上げられ、M字に固定された。
大股開きの格好を強制されたのである。
フロントガラスに向かって股間を披露しているかのようだった。
M字開脚をしているせいで陰部が口を開いてしまっていた。
それを自覚すると、胸の奥がヒヤリとした。

「嫌っ、嫌ですっ」

私は身体を揺すった。
男たちが怒り出すかもしれないと思いつつも、抵抗せずにはいられなかった。
しかし両側の男たちは、私の膝裏に腕を通し肘でしっかりとロックしており、ちょっとやそっとの力では振り解けそうにない。
運転席の男はチラチラとバックミラー越しに私の股間を覗いていた。
助手席の男なんて身を捻って直接見ている。
これほどの恥辱は今まで生きてきて味わったことがない。

「ううっ、うっ・・・ううう・・・」

それまでは涙を流すだけだったが、もはやその程度では収まらず、私は子供のように声を上げて泣き濡れた。

私は自分の股間にコンプレックスがあった。
陰毛は薄いが、小陰唇の形が崩れていて、しかも少し出っ張っているので、非常に醜く見えるのである。
まああんまり比較検討はしていないので、どの程度の醜さなのかはよく分からないが。
しかし、綺麗な部類には入らないに違いない。
男たちが私の股間についての感想を特に述べなかったのでホッとしたくらいだった。

<続く>

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