彩子との遠距離恋愛[シーズン2]

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―――2002年春

彩子は長い休みになるとこっちに帰ってきていました。
今年の正月休みの時も、26日までは実験が長引いているからと、28日に横浜に戻ってきました。
正月休みは15日くらいまであるようでした。

俺の仕事は年末が忙しく、11、12月休み無しだったので、ちょうどよくって。
11月のはじめ以来会えなかったんで楽しみでした。
忙しいと電話はなかなか出来ませんでした。
最近はメールを中心に連絡していました。

山下は話しやすい奴でした。

「殴ってくれ」と言われましたが、殴りませんでした。

何度も頭を下げて、「もう酒を飲んで彩子さんに近づいたりはしない」と言っていました。

俺はなんか自分のほうが悪いような、恥ずかしいような感じがしました。
次は無いと念を押し、俺は帰りました。

山下は「実験の引き継ぎが終わり次第、彩子さんとは話をしない」と言っていました。

最後は新幹線のところまで送ってくれて、またそこで頭を下げてました。
俺が山下と話した後、彩子も俺に謝って、もうしないと言いました。

「お酒も飲まない」と言いました。

賢くって、いつもは年下なのに俺より鋭い意見を言ったりする彩子が俺に怯えてました。

一週間もするといつも通りの彩子に戻りました。
電話も楽しそうにかけてきました。
毎日メールをくれました。
今まで以上に俺にべったりになりました。
それも彩子の強さだろうと思いました。
俺も気にしないようにしようと思いました。

28日は無理やり午後休を取りました。
課長に怒られました。
家に帰って着替えて、車で新横浜に行きました。
4時半ころ駅前の大通り近くの駐車場に止めました。
5時半待ち合わせでした。

彩子はちょっと遅れて、駐車場まで走ってきました。

「ごめんねーやーーーきゃーー久しぶりだー」

白いセーターで、赤のチェックのシャツでした。
前髪がちょっと伸びてました。
昔は首筋が見えるのがヤダといっていた髪を上げて、ポニーテールよりちょっと上のほうでまとめてました。
ちょっと茶色になってて、色の白い彩子は黒の方が似合ってると思いました。
そのあとで二人でラーメン博物館に行きました。
名前は覚えてませんが一番下の一番右側のお店に行きました。
彩子はいつもよりお喋りでした。
俺も仕事の話とか友達の話を沢山しました。
今度いつかカレーの方にも行こうという話になりました。
休みの間にズーラシアと、それから近場に出来たショッピングモールに行くことになりました。
その日はすごく楽しかったです。
年が明けてお正月になって。
元旦以降の俺の休みの時に遊びに行くことにしました。
高校の時の同級生と言うのは、俺の後輩でもあったので俺も話を聞いてて楽しかったです。
29日、30日とその子の家に泊まって、大晦日は家族と過ごすそうでした。

俺は彩子とやっていなかった今年のクリスマスをやりたかったので、元旦にお正月を兼ねてプレゼントを渡そうと思ってました。

彩子が帰ってきた夜ですが。
山下とのことですが、やっぱり幾つかは詰問してしまいました。
気持ちよかったのかどうか、それ以降連絡はあるのかどうか。
気持ちよかったかと聞くと、彩子は激しく否定しました。
酒に酔っていてよく解ってないとも言いました。
それ以降の連絡についてですが、幾度か声は掛けられたものの実験の時もほとんど話してはいないそうです。

その日、彩子はサービスがよくって。
フェラの時、唾を垂らしながらやってくれました。
何度も好きと言ってくれました。

28日は夜家に返しました。
29・30日と友達の家に行くらしかったので。
でもやっぱり声が聞きたいと思いました。
近くにいるというだけでちょっと贅沢な気分になっていたかもしれないです。

彩子は電話をくれました。

「今ねー、このみの家でねー。楽しいの」

楽しそうでした。

明日も泊まるとのことで、このみちゃんは「先輩彩子は預かった!!」とか言ってて。
楽しそうでした。

「早く俺に返してねー」と言うと、このみちゃんも「明日も連絡させますので!」と余計な気を回したようでした。

30日は仕事忙しくって終わったのが12時半頃でした。
もう寝たかなと思って、電話はしないでおこうと思いましたが、今日の着信履歴の中にこのみの家があったので。
1時頃でしたが電話してしまいました。

彩子のは圏外でしたので、このみの携帯にかけました。

「あ、もしもし。すみませんこんな夜中に。電話入ってたからさ。彩子いる?」
「え?あー先輩!んー彩子ですか?寝ちゃってるから。出れなさそう。お仕事今終わられたんですか?」

「あ、うん。忙しくって。春になれば落ち着くんだけどね」
「ふーん。先輩彩子となんかありました??」

「ん?なんも。なんか言ってた?うーん。まあ、ちょっと向こうであったんだけどね」
「ちょっとね。彩子悩んでたみたいなので。でも、先輩愛されてるっぽいですよー」

「ははっじゃあ、彩子起きたら明日夜にでも電話くれって言っといてください」

って言って、電話を切りました。
彩子には、繋いでくれませんでした。

なんか。やな感じがしました。
いつかあったような。

結局彩子は単にこのみの家で眠ってしまっただけのようでした。
でも、なんか嫌な感じがしました。

こういう時なんか俺はストーカーのような気持ちになるようです。
彩子を縛りたいというより、監視したいと言うような。
俺はやっぱりあの時のことで、彩子を信用しきれてはいないのかも知れないと思いました。

正月が過ぎて、初めて会った時に、初めて彩子を裏切りました。

遅いクリスマスプレゼントに彩子には、紺色のベルトの時計をあげました。
忘れてしまってると思ってましたが、彩子は俺に香水をくれました。
『SAMURAI』とかいう名前の爽やかでいい匂いの香水でした。

初めて彩子を裏切りました。
喫茶店で彩子がトイレに言った時に、手帳を見ました。
手帳は彩子の性格そのままに、質素な感じの黒い手帳でした。
去年の4月から今年の4月までの手帳でした。
手帳にはあまり文章らしいものは書いておらず、シールと単語だけが書いてありました。
毎月2枚ほどと、今日の所には赤いシールが貼ってあり、「やっくん!」と書かれていたので、俺と会うときはその赤いシールなんだと思いました。
青いシールもありました。
見なければ良かったと思いました。

青いシールのところには単語は何も書いてませんでした。
去年の7月辺りから毎週2枚ほど貼られていました。
大抵第1週と3週の土日、第2週と4週には月曜日と水曜日のところに貼ってありました。
12月には、24日と25日に貼ってありました。

多分、山下が約束を守らなかったんだと思いました。

それまでは、彩子と山下のことを思い出して興奮することは余りありませんでした。
でも、その手帳を見て、青いシールが7月から貼ってあったとき、逞しい山下にあの華奢な彩子が突きまくられていた映像と、彩子の喘ぎ声を思い出しました。
その思い出と、俺の興奮が、繋がりました。

物凄い焦燥感が襲ってきて、目の前がくらくらしました。
コーラを飲んで、落ち着こうとしました。
心臓の重い感じが、なくなりませんでした。
俺は、興奮していました。

彩子が帰ってきて、手帳を出して聞いてみました。
彩子は最初、認めませんでした。
俺は、理詰めで聞いていきました。

何故、俺と会う第2週と4週に必ずと言っていいほど貼ってあるのか。
何故、毎週2枚、必ず貼ってあるのか。
何故、12月24日に貼ってあるのか。
何故、彩子の誕生日の10月15日に貼ってあるのか。
何故、毎日俺と電話していたのに、俺はその、週に2回あるシールを貼っておくほどの彩子の習慣のことに何一つ思い当たりが無いのか。
何故、大阪でだけでなく、横浜にまだいるはずの明後日にシールが貼っているのか。

彩子は俯きながら、話すと言いました。

喫茶店では話しづらいというので、車の中で話すことにしました。
いっつもお話する公園の横の駐車場で。

あの後も、彩子と山下は続いていたと聞かされました。
彩子は泣きそうになっていて。
俺は心臓が痛くって。
興奮していました。

久しぶりに笑いそうでした。

俺が「俺と別れるつもりなのか」と言うと、泣き出して嫌だと言いました。

「山下と切れるのか」と言うと、黙って、俯いて答えませんでした。

汚れてしまっているから俺から振って欲しいと言われました。
俺には彩子しかいません。
別れたくありませんでした。

彩子に「別れたいのか」と聞くと、嫌だと言いました。
彩子に「山下と切れるのか」と言うと、答えませんでした。

でも俺とは絶対に何時になっても別れたいなんて思わないと言いました。

2時間くらい話していて。
頭がパニックになっていて。
怒りと焦燥感で。
でも多分冷静にその条件でどうすれば俺が納得できるのか考えていました。
彩子に、これからも一緒にいたいと言いました。

条件をいくつか付けました。
これまでの事を全て話せと言いました。
学校を卒業したら横浜に帰って来いと言いました。
今まで以上に必ず俺に愛情を持っていることを表現しろと言いました。
それで、今まで通りに付き合おうと言いました。
彩子は首を振って言いたがりませんでしたが、全て嘘偽り無く教えないとそのときこそ別れると言うと、俺に今までのことを教えてくれました。

山下とは、その後も食事などを一緒にしていました。
だんだんといつも一緒にいる2人は仲良くなってきたようでした。
7月に、食事の後、山下の車の中でやられたとのことでした。

俺は彩子に手帳の日ごとに何があったか、どんなことをしたか聞きました。

8月4日から2日間、伊豆の波勝崎のそばのペンションに2人で行ったと言いました。
行く最中の車の中、山下はだいぶ興奮して、運転中よく彩子の胸を弄っていたと言っていました。
波勝崎は、岩と猿が多い海岸なので、近くの砂浜に生き、2人で泳いだと言っていました。
彩子は水色のワンピースの水着を着ていたと言っていました。
俺は去年は彩子の水着は見ていないので、水色のは知りませんでした。
2人はあまり海には入らず、肌を焼いていたそうです。

夜は、あまり寝なかったと言っていました。
山下は裏筋を舐められるのが好きで、フェラの時は、上半身裸で、下半身は、スカートを穿かされていたようです。
その時に、つばを垂らすやり方を教わっていました。
彩子はベッドに押さえられて、正常位と、バックで抱かれていました。
1回終わってから俺に電話をしたほうがいいと言われていました。
日焼けした彩子の体は、ちょっと赤くなっていたんだろうなと思いました。

夏の後の話は、なんか恋人同士の話のようでした。

週に2回は彩子の家に泊まっていました。
クリスマスはUSJに行っていました。
彩子は金色のネックレスを貰っていました。
彩子にはちょっと派手なネックレスだと思いました。

研究室でも何度か抱かれたそうです。
二人の研究は忙しくて、10時を過ぎることも何回かあったようで。
彩子が机の上に座って、スカートを背中まで捲って、山下が下から突き上げて何回かしていました。

車でも良くしたそうです。
セダンなのであまりSEXは出来ず、主にフェラチオで彩子が山下を、山下は手で彩子をイかせていました。
聞いていて、刺すような痛みで、話を止めました。

俺は、中高といじめられっ子でした。
体力がなく、眼鏡をかけていて、髪や格好にも気を使いませんでした。
ひどく、コンプレックスでした。
彩子は、泣きそうになって俺に話してくれました。
ちっちゃい彩子がなんかちっちゃくなってました。
顔の造作はあんまり悪くなかったようで、かっこ良いと言ってくれる子もいます。
穏やかな性格なので、好きと言ってくれる人もいます。
俺は努力して、頑張ってそこそこ見れる人になったと思います。
彩子のおかげでした。
彩子にとって高校3年間、俺はずっと一緒にいた人でした。
俺は彩子が可愛くて可愛くて、いっつも一緒にいました。
つまらなくっちゃいけないと、次の日話す内容を家で考えました。
会う度に頭を撫でました。
俺の話いっつもお腹抱えて笑ってくれてました。
俺がはじめて入った会社がつぶれた時、「そっか。頑張れ!」としか言ってくれませんでした。
新しい会社が決まった時、泣いてくれました。
なんでもない2次方程式が解らないと、夜中に電話をかけてきました。
その時は寂しかったんだと思います。
彩子は、寂しかったんだと思いました。
いっつも一緒にいて、頭を撫でていて、止め処なく喋る彼氏でした。
俺は、仕事が楽しくて、よく仕事の話を彩子にしました。
2週間に1度、会いに行きました。
1ヶ月に2回、会いました。
毎日、電話しました。

でも、1ヶ月に2度しか頭は撫でられなくて。
彩子にわからない問題は、俺にも解らない問題になっていました。

俺は一生地元から離れるつもりはありません。
どこに行っても、彩子と行ったことのあるところばかりです。
別れるという選択肢は、ありません。

俺は彩子に、山下とのことは、逐一報告させることにしました。
俺は彩子のことを理解しきることはできません。
でも彩子は、俺が山下とのことを聞くと興奮するという事は理解してくれました。
3日後、横浜に来ていた山下と、彩子は会っていたようでした。

3つだけ、約束しました。
山下と会う時は、事前にわかっている場合、当日にメールを入れる。
抱かれる前に、着信を一回だけ入れる。
俺が会いに行く時は、俺を優先する。

その3日後、メールが入りました。
夜九時に着信が一回だけ入りました。
気が狂いそうになりました。
携帯は切られてました。

山下の泊まってるホテルを探しました。
激しい焦燥感と、重い心臓。
多分俺は笑ってました。

話はこれで現実に追いつきました。
その後、週に2回くらい、1回きりの着信が入ってきます。
仕事をしている最中の時もあります。
気付かずに着信から3時間ほど経っていた時もあります。
俺は、そのたび、焼け付くような焦燥感があります。
会うたび、山下に抱かれた時の話を聞きます。
彩子は、徐々に山下の体に慣れているような気がします。
良くない。ふさわしくない彼氏のような気がする時があります。

でも。昨日も会いました。

梅田の駅で、抱きついてきてくれました。

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